地盤と地震災害 第3回: 微動探査の展望と計測方法

地盤, 微動ラボ, 微動探査

インタビュー 先名 重樹先生
博士(工学) 国立研究開発法人 防災科学技術研究所
社会防災システム研究部門主幹研究員    
当法人理事

 専門は地震動予測地図の作成、地震動数値シミュレーション、3次元地盤モデルの構築、物理探査手法の解析全般

1.先名先生はどのような理念で微動探査に注力されているのですか?

 微動探査は地下構造調査の中でも比較的新しい調査方法ですが、私たちの考案したシステムによる微動探査は、ヒューマンエラーが非常に少ない調査手法であると考えています。他の調査は、技術的・工程的に難しく複雑な部分があって、個々の技術レベルや結果の解釈が異なって結果に大きな差が出るのですが、私たちが実施している微動探査はそれが非常に少なく、非常に安定的な結果を出すことが出来ます。そのため、微動探査を標準化してたくさんできるようになれば、かなり短い期間にコストダウンして品質のよい調査ができるのではないかということで、15年間ほどこの技術開発に携わっています。

2.海外の活用事例等はありますか?

 防災科学技術研究所では、国際協力機構(JICA)SATREPS事業において、現在、南米のコロンビア共和国にてこのシステムが使われています。この事業では、現地の研究者や学生の手によって約500点程度以上の微動アレイ観測を行い、ボゴタ市の3次元地下構造モデルを構築しています。地盤モデルは防災科学技術研究所で実施しているモデル化手法とほぼ同じです。また、北欧のノルウェー地盤工学研究所(NGI)と連携協定を結び、主に浅層部の地盤構造の共同研究を行っています。

3.防災にはどのように役に立つのですか?

 地震が発生すると、例えば自宅周辺の役所等にある地震観測点で震度4などと観測された場合、自宅の震度もそのくらいだと考えることがあるかと思います。ただ、自宅にいる場所と観測点の震度(揺れの大きさ)が大きく違うことがあります。その原因として、地形や地盤が異なること等が考えられ、非常に近い場所でも震度階が1ないし最大で2段階(震度5強が6強に)程度変わってきてしまうということがあります。また、揺れ方(周期特性)も異なってきていることも考えられます。これらを素早く面的に把握するためには微動探査を行い、震度を得られる場所から揺れやすさ・揺れ方がどれくらい違うのか、またそれによってどういった建物の被害に備えなければならないのかを知る必要があると考えています。

4.今後の微動探査の開発等の展望を教えてください

 当初の微動計は数十キロ程度の重さがありましたが、現在私たちが使っている機材は3キロ未満の重さになっています。実はもっと軽量化することも可能だと考えています。また、私たちの使用している機材は、現状でもヒューマンエラーが出にくい非常な簡単な仕組みにはなっているのですが、これをより簡単な仕組みにすることも可能であると考えています。今後本手法が、建築・土木等多方面で有用であることが認められ、ニーズが増えてきた場合は、機材の需要が多くなり、開発競争も行われてくると思います。現時点では、微動観測の多くは研究者の間でしか行われていないため、なかなか開発競争が起こらずあまり機械の進化はしてきませんでしたが、これからは軽量化、省電力化はもちろん、人工衛星の精度も良くなってきているので、観測した場所のポイントも別途地図で押さえること無く、ほとんど何もしなくても解析結果までが簡単に出るような仕組みになっていくと考えています。また、他の業界でも同じ状況だと思うのですが、地盤調査・地盤モデル構築のAI化が進んでいくと思います。

5.地域微動探査協会に期待することがありますか?

 私の目標として、日本国土の「揺れやすさの基盤地図」をつくるということを目指しています。そのためには、理想としては100万点程度の観測が必要だと考えています。これは人が多く住んでいる低地や台地を250メートルメッシュで日本全国を観測すると、約100万メッシュ分であることによります。国のプロジェクトではこれまでに2万個所程度で実施していますが、このペースでは100万点実施するのに50年程かかる計算になります。これを国民協働的にたくさん実施する流れを作るには、一般社団法人 地域微動探査協会で大々的に活動を展開していただき、民間事業者・個人等さまざまな人が関わって、最終的にはごく自然に測定されていくという流れが出来ることが重要だと考えています。そのような事を指導し、さらに手法の標準化を推進・サポートもできるような組織になってほしいと考えています。

6.現地調査はどのように行いますか?

 写真は配置方法の一例ですが、4台の機械(微動計)を置いていますがこの4台で微動観測を同時に行い、いろいろな方向からくる微動を観測しています。正三角形状に置くことで、効率よく理想的に波の速度(位相速度)を計算することが出来ます。 波の速度を解析することで、例えば細かい波だと浅いところ、長い波だと深いところの軟らかさ硬さがわかります。周期毎に速度を解析すると、浅いところから深いところの軟らかさ硬さ(S波速度)を連続的にモデル化することができ、地下構造がわかってきます。

7.微動計の置き方にはどのような意味があるのですか?

 例えば、上の写真に示した置き方、極小アレイは、半径60センチの正三角形で設置されています。アレイの大きさは車幅未満となり、車の後ろにすっぽり入る大きさで、一人で観測できるようになっています。深さは30メートル程度から微動の条件の良いところでは100メートル程度の深さまでの地盤の軟らかさ硬さ(S波速度)および揺れやすさの周期特性がわかるようになっています。

8.観測の特徴は?

 写真の観測状態で15分間の観測を行います。観測が終わったらデータをiPadで回収し、インターネットを経由して、国立研究開発法人 防災科学技術研究所の微動クラウドシステムにデータを送ります。データの品質管理や解析は自動的に行われ、約3分で解析結果を現場で確認することができます。観測はご老人でも、小学生でもできる、特別な技術を必要としない、結果の再現性が高い手法です。なお、観測時間の15分間の間は、静かにしていることが望ましいのですが、機械に直接さわらなければ何をしていても構いません。

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