なぜ震源より遠いところが揺れる地震がある?

地震, 微動ラボ

なぜ震源より遠いところが揺れる地震がある

横山 芳春 博士(理学)
当法人理事 事務局長 (平野の地質と地形、地盤災害の専門家)

震源地の近くより遠く離れた場所がゆれる地震

 4月18日土曜日の夕方17時26分に、小笠原諸島西方沖を震源としたマグニチュード6.9の地震がありました。この地震では、震源から近い小笠原村母島で震度4を観測したほか、宮城県から南の山形県、福島県、茨城県、栃木県、茨城県、千葉県、埼玉県、東京都区部、神奈川県に至る東日本の広い都県で震度2を観測しました。通常、地震があると震源の近くが大きくゆれ、離れていくとゆれが小さくなっていくことが一般的ですので、揺れる範囲が広いことで少し特殊な例であるといえます。

                                        気象庁HPより

 もう一例、5年前の2015年5月30日20時23分に、同じく小笠原西方沖を震源とした、マグニチュード8.1という自信がありました。この地震では、小笠原村母島で震度5強を記録したほか、震源から離れた神奈川県二宮町で同じく震度5強を記録しました。また、茨城県、栃木県、千葉県、埼玉県、東京都区部、神奈川県、山梨県、静岡県、長野県の広い範囲で震度4を記録しました。地震発生時は千葉県内の自宅にいましたが、バスタブが船のようにゆさぶられるような、大きなゆれを感じたことを記憶しています。

                                      気象庁HPより

 2つの地震の規模は、マグニチュード6.9と8.2と異なりますが、エネルギーの違いは約90倍となります。共通点は、震源地が「小笠原諸島西方沖」のほかに何かあるでしょうか?それは、今年4月18日の地震は深さ490㎞、2015年の地震は深さ682㎞と、通常起きている多くの地震が深さ数km~80㎞程度の深さで起きていることを考えると、非常に深いところで起きている地震であるといえます。

地震の波が遠くまで伝わるケース

 このような深いところで起きる地震は、下の図のような、地球表面を覆っている「プレート」と呼ばれる岩盤ががぶつかり、海側のプレートが地球の内部に沈み込んでいく境界付近の地震で発生することがあります。図のようなプレート境界付近の奥深くで起きた地震は、地震の波が減衰しにくいプレートの表層部を通って遠くまでとどき、震源から遠く離れた場所で揺れを感じることがあります。地球内部の地震の波の伝わりやすさにより、地震の波が小さく減衰する震源の近くよりも、地震の遠くのほうが揺れが大きかったり、震源からはるか遠くにまでゆれが及ぶことがあります。このような地震の揺れ方は「異常震域」と呼ばれています。                                    気象庁HPより

 小笠原西方沖の2つの地震は、日本から東側にある「太平洋プレート」が、日本の南側にある「フィリピン海プレート」に沈み込んでいく、非常に深いところで発生した地震(深発地震)です。このため、太平洋プレートの岩盤を地震のゆれが遠くまで伝わっていくことで、日本の地下に太平洋プレートが沈み込んでいく場所に近い、関東~東北の沿岸部などでゆれを観測する「異常震域」が発生したものと考えられます。

                       防災科学技術研究所 Hi-net 高感度地震観測網 HPより

小笠原西方沖以外でも起こる

 「異常震域」を示すゆれ方の地震は、小笠原西方沖以外でも発生します。例えば2019年7月28日に、三重県南東沖を震源とするマグニチュード6.6(震源の深さ393㎞と深い)では、震源に近い三重県ではゆれが観測されず、愛知県、奈良県、静岡県西部でもところどころで震度1が観測される程度でしたが、東日本の宮城県内で震度4を観測したほか、宮城県、福島県、茨城県、栃木県、千葉県、埼玉県、東京都で震度3を観測しています。この地震のゆれ方は、震源の真上よりも離れたところで大きなゆれが観測される、「異常震域」の典型的な例であるといえます。

                                            気象庁HPより

 この三重県南東沖の地震も、太平洋プレートがフィリピン海プレートに沈み込んでいく、地下深くで発生した地震と考えられます。三重県沖は、地震本部30年以内に70~80%の確率で発生すると想定されている「南海トラフ巨大地震」の想定震源域にあたりますが、南海トラフ地震はフィリピン海プレートがユーラシアプレートに沈み込む場所で発生する地震で、震源の深さも10~40kmと浅いため、直接の関連性は低いものと考えられます。

                                          気象庁HPより

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